銀鍵のメタトロンSS、その3でございます。
なげえ。
なかなかまとまらねえ。
なかなか書く時間がとれないとか言い訳はやめて、さっさと読みましょう。
銀鍵のメタトロンSSβ-3
前: http://fortysix046.blog.shinobi.jp/Entry/2619/
成功したか。
『一瞬でもあんたに期待した私が馬鹿だった!』と言わんばかりに〈異種〉へと飛び込んで行ったナツキを見、アキは安堵した。
意思を匂わせる〈異種〉の行動の後の、決して短くない逡巡。〈小夜時雨〉を持つ手の小さな震え。カイリやエイジたちを振り返った際の、不安と戦意がないまぜになったような目。そして、その後にアキに見せた決意の視線。
ナツキの言いたいことを理解するのは、そう難しいことではなかった。
『力を貸して。癪だけど』……そんなところだろう。癪かどうかは知らないが、普段の突っかかりようから察するに、助力を乞う判断に至るには抵抗があったことだろう。もちろんアキも、敵の排除のためには協力は惜しまない。もともと、普段の不仲はナツキの一方的な敵視によるところが大きく、アキ自身はナツキに対してそれほどライバル視は……いや、今はそんな話はいい。
あの〈異種〉の見せた行動は、アキから見ても驚愕に値するものだった。おそらくこの〈異種〉は、これまでにアキが対峙し退けてきたあらゆる〈異種〉よりも強い。その実力差は見当もつかない。……ならば、こちらも持ち得る最大の戦力をぶつけるべきだろう。
だが、それでもアキはナツキを先行させた。安い挑発まで演じてみせて。
その理由もまた、難しいものではなかった。
アキは、それほど考えて戦闘をする方ではない。多少反射神経や瞬発力などに優れているだけで、戦術は喧嘩殺法やチャンバラ程度のものだと自覚している。野生の勘のようなもので毎度なんとか凌いでいるが、いずれ、それでは何とかならなくなる日がくるのだろう。
対するナツキはというと、真逆だ。
高名な師範の下で鍛練を重ね、高度に研鑽・調律されたそれは、「剣術」というよりは「舞い」に近い。
緻密な計算や膨大な知識からなる機械のように繊細な術は、しかし、アキの獰猛で直感的な動きとは相容れないものであり、更に日頃の不仲もある。チームワークなど期待するべくもないだろう。あるのかないのかわからない半端なチームワークで向かったのでは、勝てるものも勝てない。そう踏んだアキは、あえて味方を挑発した。
怒りは人の動きを粗雑なものにする。小難しい剣術にこちらが合わせるよりは、多少荒く動いてもらった方がやりやすいというものだ。この〈異種〉がどうかは不明だが、そうした無鉄砲さが苦手な敵だっていることだろう。
幸い、勝手知ったるいつもの敵だ。あのタイミングであんなことを言えば、ナツキがああなることは容易に予想がついた。計算など不用。アキの胸中には、ただ確信だけがあった。
今頃『あいつはどこまで空気が読めないんだ!状況を考えろ!』など、各種罵詈雑言の嵐がナツキの脳内で渦巻いているに違いない。
〈異種〉の方を見れば、ナツキは裂帛の気合いとともに〈小夜時雨〉を荒々しくぶん回し、〈異種〉に斬りつけているところだった。
普段の息を呑むような、恐ろしさすら覚える美しい剣舞はどこへやら。打って変わって、筆舌に尽くしがたい怒りっぷりだ。
予想以上の忘我っぷりに、刀って力任せに振り回して斬れるもんだっけと思ったが……まあいいだろう。そうだ。この方が合わせやすい。これを敵に回すと面倒なのだろうが、今はそうではない……おそらく。今倒すべき敵ではないだけで味方でもなく、いずれ倒す敵と認識されている可能性もあるが。いや、完全にそうだろう。これからの戦闘中、どさくさに紛れて斬りつけられるかもしれない。が、あくまで倒すべき敵は、あの〈異種〉だ。さすがにそれよりもこちらを優先して倒そうとはしないだろう。
〈異種〉も心なしか、怒濤の乱舞に気圧され、腰が退けているように見えた。気のせいだろうが。
本来〈異種〉は生半可な武器では傷ひとつつけられないほどに硬い甲殻を持つため、通常はヒトの攻撃を防御するようなことはない。……の、だが。今や〈異種〉は両腕を掲げガードしたり、掌で受け止めたりしてしまっている。なまじ意思があるだけに恐怖心が芽生えてしまったのかもしれない。
それほどに、今のナツキは鬼気迫っていた。
期待していた以上の戦果を上げるナツキを内心で称賛しつつ、アキも〈レフカダ〉を構えた。
カイリやエイジら多数の候補生たちの方を見ると、教官の指示のもと、訓練場から避難を始めているところだった。そうだ、それでいい。それでこそ気兼ねなく戦えるというものだ。
「さて」
白刃を一振りし、感覚を確かめる。……いつもと変わりない。順調だ。
すっと息を吸い、吐くと同時に地を蹴り、駆ける。
距離は一瞬で縮まった。一心不乱に刀を振るう背中が目前に迫ると同時に大剣を振りかぶり、ナツキごと叩き斬らん勢いで横薙ぎに一閃する。
ナツキは瞬時に身を屈めて回避。鈍器とも刃物ともつかぬ大質量は、ただ〈異種〉のみに叩きつけられた。〈異種〉は、ナツキの剣戟を凌いでいた格好のまま〈レフカダ〉の一撃で真横に吹き飛ばされ、訓練場に無造作に配置されたコンクリ製の構造物に激突。それでも尚勢いは止まらず、コンクリ壁を突き破り崩落、けたたましい轟音と濃い土煙を立てる。
「ちょっと!危ないでしょ!」
「挑発しておいてこの程度なのか?」
噛みつくナツキを丸きり無視して、瓦礫の山を見つめながら吐き捨てるアキ。
「都合の悪い話だからってあまりにも普通に無視するな!」
「うるさいやつだな……。避けられたんだからいいだろ」
「避けなきゃ今頃真っ二つで、文句も言えない身体になってたとこよ!」
「お前は今こうして生きている。それでじゅうぶ……――ッ!」
咄嗟に〈レフカダ〉を突き出し盾にする。衝撃。金属と金属が衝突し、甲高い悲鳴を挙げる。〈異種〉が瓦礫の山から飛び出し、アキに突進してきたのだ。
「やはり……あれでは死なないか……!」
「……」
アキの言葉には応えず、黙する〈異種〉。その無機的な表情にはしかし、明確な殺意が見てとれた。
「……飛べ!」
敵の突進を受け止め続けていた〈レフカダ〉を、渾身の力で振り払う。瞬間、〈異種〉は身を翻し、〈レフカダ〉を蹴って後方に跳躍、音もなく鉄骨の先端に着地した。
「存外強いな。頭にくる」
砂の混じった唾を吐きながら悪態をつくアキ。視線はあくまで敵を捉えたまま。相手の出方にはいつでも対応できる。
たった今見せた転身もやはり、〈異種〉の行動としてはそう見られないものだ。本能に基づき動く通常の下位種であれば、アキの言葉通りに大きく吹き飛ばされ、また新たな瓦礫の山を生んでいたところだ。が、そうはならなかった。やはり、この〈異種〉は見た目通りの下位種ではない。どころか、ヘタな中位種……上位種よりも手強い相手かもしれない。
どう対処したものか、とアキが考えあぐねていたときだった。
〈異種〉が右手を軽く振った。直後、〈異種〉の拳に宿る光。光は握り拳からまっすぐ伸び、消えた。〈異種〉の手に一振りの直剣を残して。〈異種〉が武器を生成したのだ。アキの〈レフカダ〉ほど巨大でも、ナツキの〈小夜時雨〉ほど華奢でもない適度な太さと長さを備えた剣は、〈異種〉と同じく、どこか禍々しさを感じさせる意匠が施されていた。
「な……何だありゃ」
アキは唖然とした。武器を生成する〈異種〉など、これまで見たことがない。これまでアキが相対してきた〈異種〉の悉くが、拳や爪や翼、よくてその辺から拾ってきた鉄骨などを武器に戦う程度だった。
〈異種〉は剣の調子を確かめるようにその剣身を撫で、最後に大きく振ってみせた。
「そんな能力があるなんて……」
ナツキも、アキに同じく愕然としていた。
「聞いてない!」
ナツキの悲鳴をよそに、ここからはこちらの番だとでも言わんばかりに構えた〈異種〉が、直後、二人の視界から姿を消した。
なげえ。
なかなかまとまらねえ。
なかなか書く時間がとれないとか言い訳はやめて、さっさと読みましょう。
銀鍵のメタトロンSSβ-3
前: http://fortysix046.blog.shinobi.jp/Entry/2619/
成功したか。
『一瞬でもあんたに期待した私が馬鹿だった!』と言わんばかりに〈異種〉へと飛び込んで行ったナツキを見、アキは安堵した。
意思を匂わせる〈異種〉の行動の後の、決して短くない逡巡。〈小夜時雨〉を持つ手の小さな震え。カイリやエイジたちを振り返った際の、不安と戦意がないまぜになったような目。そして、その後にアキに見せた決意の視線。
ナツキの言いたいことを理解するのは、そう難しいことではなかった。
『力を貸して。癪だけど』……そんなところだろう。癪かどうかは知らないが、普段の突っかかりようから察するに、助力を乞う判断に至るには抵抗があったことだろう。もちろんアキも、敵の排除のためには協力は惜しまない。もともと、普段の不仲はナツキの一方的な敵視によるところが大きく、アキ自身はナツキに対してそれほどライバル視は……いや、今はそんな話はいい。
あの〈異種〉の見せた行動は、アキから見ても驚愕に値するものだった。おそらくこの〈異種〉は、これまでにアキが対峙し退けてきたあらゆる〈異種〉よりも強い。その実力差は見当もつかない。……ならば、こちらも持ち得る最大の戦力をぶつけるべきだろう。
だが、それでもアキはナツキを先行させた。安い挑発まで演じてみせて。
その理由もまた、難しいものではなかった。
アキは、それほど考えて戦闘をする方ではない。多少反射神経や瞬発力などに優れているだけで、戦術は喧嘩殺法やチャンバラ程度のものだと自覚している。野生の勘のようなもので毎度なんとか凌いでいるが、いずれ、それでは何とかならなくなる日がくるのだろう。
対するナツキはというと、真逆だ。
高名な師範の下で鍛練を重ね、高度に研鑽・調律されたそれは、「剣術」というよりは「舞い」に近い。
緻密な計算や膨大な知識からなる機械のように繊細な術は、しかし、アキの獰猛で直感的な動きとは相容れないものであり、更に日頃の不仲もある。チームワークなど期待するべくもないだろう。あるのかないのかわからない半端なチームワークで向かったのでは、勝てるものも勝てない。そう踏んだアキは、あえて味方を挑発した。
怒りは人の動きを粗雑なものにする。小難しい剣術にこちらが合わせるよりは、多少荒く動いてもらった方がやりやすいというものだ。この〈異種〉がどうかは不明だが、そうした無鉄砲さが苦手な敵だっていることだろう。
幸い、勝手知ったるいつもの敵だ。あのタイミングであんなことを言えば、ナツキがああなることは容易に予想がついた。計算など不用。アキの胸中には、ただ確信だけがあった。
今頃『あいつはどこまで空気が読めないんだ!状況を考えろ!』など、各種罵詈雑言の嵐がナツキの脳内で渦巻いているに違いない。
〈異種〉の方を見れば、ナツキは裂帛の気合いとともに〈小夜時雨〉を荒々しくぶん回し、〈異種〉に斬りつけているところだった。
普段の息を呑むような、恐ろしさすら覚える美しい剣舞はどこへやら。打って変わって、筆舌に尽くしがたい怒りっぷりだ。
予想以上の忘我っぷりに、刀って力任せに振り回して斬れるもんだっけと思ったが……まあいいだろう。そうだ。この方が合わせやすい。これを敵に回すと面倒なのだろうが、今はそうではない……おそらく。今倒すべき敵ではないだけで味方でもなく、いずれ倒す敵と認識されている可能性もあるが。いや、完全にそうだろう。これからの戦闘中、どさくさに紛れて斬りつけられるかもしれない。が、あくまで倒すべき敵は、あの〈異種〉だ。さすがにそれよりもこちらを優先して倒そうとはしないだろう。
〈異種〉も心なしか、怒濤の乱舞に気圧され、腰が退けているように見えた。気のせいだろうが。
本来〈異種〉は生半可な武器では傷ひとつつけられないほどに硬い甲殻を持つため、通常はヒトの攻撃を防御するようなことはない。……の、だが。今や〈異種〉は両腕を掲げガードしたり、掌で受け止めたりしてしまっている。なまじ意思があるだけに恐怖心が芽生えてしまったのかもしれない。
それほどに、今のナツキは鬼気迫っていた。
期待していた以上の戦果を上げるナツキを内心で称賛しつつ、アキも〈レフカダ〉を構えた。
カイリやエイジら多数の候補生たちの方を見ると、教官の指示のもと、訓練場から避難を始めているところだった。そうだ、それでいい。それでこそ気兼ねなく戦えるというものだ。
「さて」
白刃を一振りし、感覚を確かめる。……いつもと変わりない。順調だ。
すっと息を吸い、吐くと同時に地を蹴り、駆ける。
距離は一瞬で縮まった。一心不乱に刀を振るう背中が目前に迫ると同時に大剣を振りかぶり、ナツキごと叩き斬らん勢いで横薙ぎに一閃する。
ナツキは瞬時に身を屈めて回避。鈍器とも刃物ともつかぬ大質量は、ただ〈異種〉のみに叩きつけられた。〈異種〉は、ナツキの剣戟を凌いでいた格好のまま〈レフカダ〉の一撃で真横に吹き飛ばされ、訓練場に無造作に配置されたコンクリ製の構造物に激突。それでも尚勢いは止まらず、コンクリ壁を突き破り崩落、けたたましい轟音と濃い土煙を立てる。
「ちょっと!危ないでしょ!」
「挑発しておいてこの程度なのか?」
噛みつくナツキを丸きり無視して、瓦礫の山を見つめながら吐き捨てるアキ。
「都合の悪い話だからってあまりにも普通に無視するな!」
「うるさいやつだな……。避けられたんだからいいだろ」
「避けなきゃ今頃真っ二つで、文句も言えない身体になってたとこよ!」
「お前は今こうして生きている。それでじゅうぶ……――ッ!」
咄嗟に〈レフカダ〉を突き出し盾にする。衝撃。金属と金属が衝突し、甲高い悲鳴を挙げる。〈異種〉が瓦礫の山から飛び出し、アキに突進してきたのだ。
「やはり……あれでは死なないか……!」
「……」
アキの言葉には応えず、黙する〈異種〉。その無機的な表情にはしかし、明確な殺意が見てとれた。
「……飛べ!」
敵の突進を受け止め続けていた〈レフカダ〉を、渾身の力で振り払う。瞬間、〈異種〉は身を翻し、〈レフカダ〉を蹴って後方に跳躍、音もなく鉄骨の先端に着地した。
「存外強いな。頭にくる」
砂の混じった唾を吐きながら悪態をつくアキ。視線はあくまで敵を捉えたまま。相手の出方にはいつでも対応できる。
たった今見せた転身もやはり、〈異種〉の行動としてはそう見られないものだ。本能に基づき動く通常の下位種であれば、アキの言葉通りに大きく吹き飛ばされ、また新たな瓦礫の山を生んでいたところだ。が、そうはならなかった。やはり、この〈異種〉は見た目通りの下位種ではない。どころか、ヘタな中位種……上位種よりも手強い相手かもしれない。
どう対処したものか、とアキが考えあぐねていたときだった。
〈異種〉が右手を軽く振った。直後、〈異種〉の拳に宿る光。光は握り拳からまっすぐ伸び、消えた。〈異種〉の手に一振りの直剣を残して。〈異種〉が武器を生成したのだ。アキの〈レフカダ〉ほど巨大でも、ナツキの〈小夜時雨〉ほど華奢でもない適度な太さと長さを備えた剣は、〈異種〉と同じく、どこか禍々しさを感じさせる意匠が施されていた。
「な……何だありゃ」
アキは唖然とした。武器を生成する〈異種〉など、これまで見たことがない。これまでアキが相対してきた〈異種〉の悉くが、拳や爪や翼、よくてその辺から拾ってきた鉄骨などを武器に戦う程度だった。
〈異種〉は剣の調子を確かめるようにその剣身を撫で、最後に大きく振ってみせた。
「そんな能力があるなんて……」
ナツキも、アキに同じく愕然としていた。
「聞いてない!」
ナツキの悲鳴をよそに、ここからはこちらの番だとでも言わんばかりに構えた〈異種〉が、直後、二人の視界から姿を消した。
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