これまでここに放り投げてきたSSは、本来バトルものであるはずの脳内創作のパラレルで、普通の日常的な世界観でしたが!
シロタカ部も四人揃ったことだし、ちょっと書いてみっかと。
今回はバトルものの方を書いてみましたよ。
まだ頭の中で練ってる設定の決まってるところをポンポン放り込んで書いたものなので、これから設定が固まったりして変わってくこともあると思いますがー……。
まあ、本編連載に至った読み切り漫画みたいなイメージで読んでもらえたらと。
思います。
銀鍵のメタトロン(β版)
次: http://fortysix046.blog.shinobi.jp/Entry/2619/
「あんた相手なら、手加減しなくて済むから助かるわ」
10メートルほど先に立つ男の目を睨みながら、時雨ナツキは不敵な笑みを浮かべた。
腰に下げた鞘に左手を添え、音もなく刀を抜く。刀匠、故・雨宮雅暁の手になる最上級の業物、雨水四刀の一本に数えられる真に刃たる刃、〈小夜時雨〉。彼女がその業物中の業物を持つ理由を知る者は少ないが、その類稀な斬れ味と、それを扱う彼女の流麗な剣技は知らない者はいない。
ナツキは小夜時雨を丁寧に握り込み、すっと脇構えに移行した。青みがかった刀身が、朝焼けを浴びて幻想的な色を帯びる。
「ほら、いつでもどうぞ?」
視線は真っ直ぐに相手を見据えたまま。微動だにせず、対峙する男に向かって言い放った。
対する高城アキは、ナツキの余裕の態度に鼻を鳴らした。
「フン。余裕だな時雨ナツキ。勝てると思っているのか?」
こちらは右手に身長ほどもある白い大剣を無造作にぶら下げている。曇ったガラスのような半透明にも、鈍く光る金属質にも、光沢ある陶器のようにも見えるそれは、いかな素材であろうと相当の重量であるであろうことは容易に見てとれた。……いや。実際、一般的な人間では、振り回すことはおろか、両手で持ち上げることも叶わない重量なのだ。この〈レフカダ〉と呼ばれる大剣の95パーセントほどを構成する〈ミスリル〉、またの名を〈真銀〉と呼ばれる超金属は、タングステンや金の2倍超という非常識極まる密度の代わり、使用者に絶対の安全を約束する。超高硬度に加え、耐熱性、絶縁性、耐摩耗性など、武装に必要とされる要素のほぼ全てが高い値を誇る。故に、防具や武器などの要所に限定的に用いられることが多く、そうした品の数々は、その使用者を永く護り、多くの英雄という名の生存者を生んだ。
……が、その超重量や法外な値、また、ミスリルを独占生産していた機関の壊滅による入手の困難さなどにより、ミスリルの使用はあくまで“限定的”に止まる。一般的な数値で、武器全体の10パーセントほど。高いものでせいぜい30パーセントに満たない程度だ。ミスリルの割合が90パーセントを越える武器など、レフカダをおいて他に無いだろう。
それを軽々と振り回すアキは、人類の敵たる〈異種〉でも、異種の〈能力〉を奪い我が物とした〈インスパイアド〉でもなく、ただの人間だ。……と、言われている。異種やインスパイアドの能力の根源であり、制御装置でもある〈核〉と呼ばれる内蔵を体内に持たないため、そういうことになっている。
まさしく天賦の才……ギフトと呼ぶほかないものなのだ。
彼はその生まれ持った怪力を以てレフカダを一振りすると、空いた左の指をクイクイと曲げ、ナツキを挑発した。
「俺はいつでもいいぞ。来い」
始まらんとする決闘を少し離れた場所で見守る者が、こちらも二人いた。
石造りのベンチに腰掛け、膝に頬杖をついて眠たげにしている寝癖の春海エイジと、そのすぐ隣、地べたに体育座りをして真剣な眼差しで二人を見つめる冬峰カイリ。
ベンチの二人の更に後ろには、エイジやカイリと志と年の頃を同じくする同年代の男女が、息を呑んだりあくびを圧し殺したりしながら群れをなしていた。対異種精鋭部隊の精鋭中の精鋭二人の決闘と、それを見守る見習いたちという画だ。決闘とは言うが、要するに模擬戦。ナツキもアキも、本気でやり合うつもりなどない……はずだ。
極力殺傷能力のない模造刀を使用するように、との指揮官の提案を完全に無視して愛用の武器を持ち出してきているあたりが多少引っ掛からないこともないが、あの二人のことだ。高い技量で幾合も打ち合い、幾度もの鍔迫り合いの果てに決着がつくことなく刻限がやってくるのだろう。
……と、多くの見習いたちは考えていた。二人をよく知るエイジとカイリは楽観することもできず、ひたすら不安そうな面持ちで二人の親友を見つめていた。普段から犬猿……いや、龍虎の仲のあの二人のことだ。またとないこの機会に厄介者を始末しておこう、などと考えていてもまったく不思議ではない。
見習い最前列の二人からすれば、模擬戦が開始しても尚こうして沈黙を保っているこの状況は、まさしく奇跡に他ならなかった。
アキもナツキも、互いに互いの出方を伺い、まったく動こうとしない。
どれほど経っただろうか。
いい加減に焦れた二人が、どちらからともなくはじめの一歩を静かに踏み出そうとした、その瞬間だった。
沈黙は、意図せぬ闖入者によって破られた。
風。
風、風、風。
周囲の足元を覆う芝生がざわざわと騒ぎ、遠く立ち並ぶ木々の合間から、鳥たちが一斉に羽ばたいた。
エイジやカイリ、他多数の見習いたちが決闘者二人を見つめる視線の、更にその先。
白く輝く装甲で全身を鎧った人ならざる人形が、一対の翼を動かすこともせず、悠然と舞い降りた。
白い異形の人形に、翼、そして首の付け根あたりから生えた光輪。
〈異種〉。
伝承に伝わる天使のような姿をした「人類の敵」が、神々しくも禍々しい姿で顕現した。
シロタカ部も四人揃ったことだし、ちょっと書いてみっかと。
今回はバトルものの方を書いてみましたよ。
まだ頭の中で練ってる設定の決まってるところをポンポン放り込んで書いたものなので、これから設定が固まったりして変わってくこともあると思いますがー……。
まあ、本編連載に至った読み切り漫画みたいなイメージで読んでもらえたらと。
思います。
銀鍵のメタトロン(β版)
次: http://fortysix046.blog.shinobi.jp/Entry/2619/
「あんた相手なら、手加減しなくて済むから助かるわ」
10メートルほど先に立つ男の目を睨みながら、時雨ナツキは不敵な笑みを浮かべた。
腰に下げた鞘に左手を添え、音もなく刀を抜く。刀匠、故・雨宮雅暁の手になる最上級の業物、雨水四刀の一本に数えられる真に刃たる刃、〈小夜時雨〉。彼女がその業物中の業物を持つ理由を知る者は少ないが、その類稀な斬れ味と、それを扱う彼女の流麗な剣技は知らない者はいない。
ナツキは小夜時雨を丁寧に握り込み、すっと脇構えに移行した。青みがかった刀身が、朝焼けを浴びて幻想的な色を帯びる。
「ほら、いつでもどうぞ?」
視線は真っ直ぐに相手を見据えたまま。微動だにせず、対峙する男に向かって言い放った。
対する高城アキは、ナツキの余裕の態度に鼻を鳴らした。
「フン。余裕だな時雨ナツキ。勝てると思っているのか?」
こちらは右手に身長ほどもある白い大剣を無造作にぶら下げている。曇ったガラスのような半透明にも、鈍く光る金属質にも、光沢ある陶器のようにも見えるそれは、いかな素材であろうと相当の重量であるであろうことは容易に見てとれた。……いや。実際、一般的な人間では、振り回すことはおろか、両手で持ち上げることも叶わない重量なのだ。この〈レフカダ〉と呼ばれる大剣の95パーセントほどを構成する〈ミスリル〉、またの名を〈真銀〉と呼ばれる超金属は、タングステンや金の2倍超という非常識極まる密度の代わり、使用者に絶対の安全を約束する。超高硬度に加え、耐熱性、絶縁性、耐摩耗性など、武装に必要とされる要素のほぼ全てが高い値を誇る。故に、防具や武器などの要所に限定的に用いられることが多く、そうした品の数々は、その使用者を永く護り、多くの英雄という名の生存者を生んだ。
……が、その超重量や法外な値、また、ミスリルを独占生産していた機関の壊滅による入手の困難さなどにより、ミスリルの使用はあくまで“限定的”に止まる。一般的な数値で、武器全体の10パーセントほど。高いものでせいぜい30パーセントに満たない程度だ。ミスリルの割合が90パーセントを越える武器など、レフカダをおいて他に無いだろう。
それを軽々と振り回すアキは、人類の敵たる〈異種〉でも、異種の〈能力〉を奪い我が物とした〈インスパイアド〉でもなく、ただの人間だ。……と、言われている。異種やインスパイアドの能力の根源であり、制御装置でもある〈核〉と呼ばれる内蔵を体内に持たないため、そういうことになっている。
まさしく天賦の才……ギフトと呼ぶほかないものなのだ。
彼はその生まれ持った怪力を以てレフカダを一振りすると、空いた左の指をクイクイと曲げ、ナツキを挑発した。
「俺はいつでもいいぞ。来い」
始まらんとする決闘を少し離れた場所で見守る者が、こちらも二人いた。
石造りのベンチに腰掛け、膝に頬杖をついて眠たげにしている寝癖の春海エイジと、そのすぐ隣、地べたに体育座りをして真剣な眼差しで二人を見つめる冬峰カイリ。
ベンチの二人の更に後ろには、エイジやカイリと志と年の頃を同じくする同年代の男女が、息を呑んだりあくびを圧し殺したりしながら群れをなしていた。対異種精鋭部隊の精鋭中の精鋭二人の決闘と、それを見守る見習いたちという画だ。決闘とは言うが、要するに模擬戦。ナツキもアキも、本気でやり合うつもりなどない……はずだ。
極力殺傷能力のない模造刀を使用するように、との指揮官の提案を完全に無視して愛用の武器を持ち出してきているあたりが多少引っ掛からないこともないが、あの二人のことだ。高い技量で幾合も打ち合い、幾度もの鍔迫り合いの果てに決着がつくことなく刻限がやってくるのだろう。
……と、多くの見習いたちは考えていた。二人をよく知るエイジとカイリは楽観することもできず、ひたすら不安そうな面持ちで二人の親友を見つめていた。普段から犬猿……いや、龍虎の仲のあの二人のことだ。またとないこの機会に厄介者を始末しておこう、などと考えていてもまったく不思議ではない。
見習い最前列の二人からすれば、模擬戦が開始しても尚こうして沈黙を保っているこの状況は、まさしく奇跡に他ならなかった。
アキもナツキも、互いに互いの出方を伺い、まったく動こうとしない。
どれほど経っただろうか。
いい加減に焦れた二人が、どちらからともなくはじめの一歩を静かに踏み出そうとした、その瞬間だった。
沈黙は、意図せぬ闖入者によって破られた。
風。
風、風、風。
周囲の足元を覆う芝生がざわざわと騒ぎ、遠く立ち並ぶ木々の合間から、鳥たちが一斉に羽ばたいた。
エイジやカイリ、他多数の見習いたちが決闘者二人を見つめる視線の、更にその先。
白く輝く装甲で全身を鎧った人ならざる人形が、一対の翼を動かすこともせず、悠然と舞い降りた。
白い異形の人形に、翼、そして首の付け根あたりから生えた光輪。
〈異種〉。
伝承に伝わる天使のような姿をした「人類の敵」が、神々しくも禍々しい姿で顕現した。
PR
COMMENT FORM
TRACKBACKS
プロフィール
HN:
シロタカ
HP:
性別:
男性
趣味:
昼寝、音楽、散歩、
絵、模型、写真、、、。
絵、模型、写真、、、。
自己紹介:
好きなもの:ムック、藍坊主、赤、辛いもの、マンゴー、SDガンダム(特に武者頑駄無)
苦手なもの:においが強いもの
苦手なもの:においが強いもの
最新記事
最新コメント
[03/26 サンドリゲスナー]
[02/03 wheetspseudge]
[05/09 zin001]
[04/11 かぽ]
[02/20 yuco]
カテゴリー
アーカイブ
ブログ内検索
バーコード
アクセス解析