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A Very Merry Christmas Time   / つづれ織り ,CM:0 ,TB:
クリスマスということで。

絵は忙しくて描けなかったけど、代わりにSSを書きましたよ。

寝ぼけ眼をこすりながら書いたんで、変なところとか多数あると思われますが!

全力で見逃せ。





ウィンターソングがそこかしこから流れ、まだ昼間だというのに、あちこちが電飾で落ち着きなく輝く街。
少年と少女は、赤レンガの大通りを並んで歩いていた。

「朝からごめんねー、アキ。男の子への誕生日プレゼントって、わたし何買ったらいいか全然わかんなくて」
金髪……と呼ぶには色素の薄い白金の髪の少女は、隣を歩く頭ひとつほど背の高い少年を見上げて苦笑いを浮かべた。
「チッ……と言ってやりたいが、謝礼は……一応もらってるしな」
アキと呼ばれた少年は、右手にかかった赤いマフラーを見て低くつぶやいた。
慣れない手つきで頑張ったのだろうか。マフラーはところどころいびつによじれたり、普通に編むより難しそうな奇妙な起伏ができたりしている。
彼女の手先の不器用さを知るアキは少女を見、
「使うことがあるかは、わからないが」
口角をわずかに上げ、付け加えた。
冷笑と言うには皮肉の弱い、彼にしては珍しい素直な笑みだった。
「ひどーい。お母さんに教えてもらいながらがんばったのにー!」
それに気付く様子もなく、バカにされたと思った少女――冬峰カイリは、白い頬を膨らませてアキの背中をぽかぽかと叩いた。

今日は12月25日。中学校は二日前から冬休みに入り、二人は、年明けに誕生日を迎える同級生へのプレゼントを買いに、クリスマスの街へと繰り出していた。
シャンシャンと、電子の鈴の音が冷たい空気を揺らしていた。







「んー、なかなかいいコいないなぁ」
回転什器にずらりと並ぶ伊達メガネを一通り見て、少女はつぶやいた。
目にかかる黒い前髪を時折指で払いながら、それでも掘り出し物はいないかと物色を続ける。
自分へのクリスマスプレゼントを求めて立ち寄った雑貨屋。正直を言えば、時雨ナツキは後悔していた。
クリスマスなのだ。周囲、いや、街にはカップルで溢れている。この雑貨屋も、普段はわりと閑散としているものだが、今日は少しだけ混んでいた。
メガネを物色している自分以外、レジに並ぶ客も、アクセサリーを見ている客も、本を棚から出しては戻している客も、すべて男女連れだ。
ナツキは生まれてこの方、彼氏というものがいた経験がなかった。
元来おとなしい性格で、目立つ行動をするタイプではない。友達がいないわけではない。が、彼女らも当然おとなしく、グループそのものが地味。クラス内を分類するとすれば、彼女も間違いなく「マイナー系」とかそういうところにカテゴライズされるだろう。
「……はあ」
溜め息を受け、手元の伊達メガネ(売り物)が白く曇った。
商品を什器に戻したナツキは、ふと自動ドアの方を見やった。
そしてそこに、この世のものとは思えないものを見出だした。

腰ほどまである白金の髪と、長い睫毛に縁取られた大きな緑色の目を持つ、まるで精巧に作られた人形のような少女。
髪は脱色や染色によるそれではなく、ツヤはよく、ふんわりと柔らかな質感が金色の糸を思わせた。
どこか幼さの残る顔立ちは、日本人的なふくよかさと同時に、欧米人のようなシャープさも秘め、言葉では言い表せない神秘性を漂わせていた。
ナツキの視線は、少女に釘付けになった。少女はそれに気づくはずもなく、隣の背の高い少年に連れられ、すぐに店内からは見えなくなってしまった。

しばらくそのまま店の外をぼんやりと眺めていたナツキは、はっと我に返り、先程とはまた違った溜め息をついた。

まさか、あんなに綺麗なもの……いや、人を拝むことができるとは。まるで天使のようだった。
先程の後悔は既に消え去り、別の感情がナツキの胸中に去来していた。
「……最高のクリスマス、最高のクリスマスプレゼントだわ……」

この4ヶ月後、進学先の高校で彼女らと奇跡の再会を果たすのだが、このときのナツキには知る由もなかった。







画面に浮かび上がる派手な「YOU WIN」の飾り文字。
何度目かわからない祝福の画面表示を見ても、春海エイジの心は晴れなかった。
クリスマスだというのに、オレはゲームセンターで何をやっているんだろうと思った。
格闘ゲームなのは見ればわかる。問題はそこではない。そんなものは本来、わざわざクリスマスに寒空の下外出などせずとも、我が家でこたつに入っていくらでもできる。
そう、本来ならば。現状は例外中の例外だ。
エイジは自宅からの退出を余儀なくされたのだ。
彼女持ちの兄が、こともあろうに自宅デートを敢行した為だった。クリスマスくらい外に出てイチャコラしていればいいものを、わざわざ家に彼女を連れ込んで、あまつさえ家族に挨拶など……。挨拶が済むや否や、エイジは母親の手により追い出されてしまった。
突然外に放り出されたところで行く宛などなく、フラフラと歩いて行き着いたゲームセンターで、こうしてゲームに興じているといかわけだ。
幸い、自分と似た暇な連中も多く、相手には事欠かなかった。家庭用で日々鍛練を積んできたエイジの腕はそこそこ悪くないらしく、今のところ、たったの1クレジット……100円で連勝を重ねているというわけだ。
そしてまた一人の乱入。
キャラクター選択画面が表示され、相手がキャラクターを決定する。エイジの駆る細身イケメンの主人公キャラと、相手のムキムキマッチョな投げキャラ。勝負は長くはなかった。
どうやら相手は初心者だったらしい。小パンチやキックのラッシュに紛れて、稀にコマンド技が混じる程度だった。エイジは初心者相手にも手加減は一切せず、華麗に3ラウンドを制し、ストレート勝ちを決めた。
ストレート勝ちとはいえ、相手は初心者。気は晴れないどころか、余計に苛立ちが増した気がした。
CPU相手に舐めプレイでもして憂さを晴らそう。そう思って適当にボタンを押し、対戦カード画面を送っていた。すると、
「ゲーム上手ですね」
背後から声が降ってきた。少年のような少女のような、高いが中性的な声。
「あー……」適当に相槌を打ちながらエイジが顔だけ振り向くと、一人の少女がエイジの画面を見つめていた。
そして、続く言葉が出てこなくなった。
白金の髪の少女が、大きな緑色の目を輝かせていた。
「えっと……さっきの?」
「うん。楽しそうだったからやってみたけど、全然ダメだったや。意外と難しいし、相手も上手だし!」
「あー、その……どうも」
顔が赤く染まる感覚を覚えながら、俯き気味に答えた。
(どうしよう、頭の中が真っ白だ)
こんなに可愛らしい女の子を見たことがない上、声までかけられるとは。完全に不意打ちだ。惚れてしまったかもしれない。
次の言葉を見つけかねていると、筐体が鳴った。乱入だ。
「あ、すみません。すぐ終わると思うんで……」
すぐ終わらせてどうするつもりなのか。自分でもよくわからなかったが、思わず口をついて出てしまった。
再びのキャラクター選択画面。
相手のキャラクターは……エイジと同じ。
へえ、いい度胸じゃん。
スティックを握る指に力が籠るのがわかった。
1ラウンド目はエイジの勝利だった。
迷わず同じキャラを選んできた割に相手の動きは鈍く、コマンド技もほとんど使わず、キャラの感触を確かめているようにエイジには思えた。

2ラウンド目もエイジの勝ちだった。
相手は先程のラウンドでキャラの動き方をおおよそ掴んだようで、見違えるような動きだった。
とはいっても、あくまで退き気味に、まるで様子見をするかのように立ち回っていたので、実力の程は分からなかった。

3ラウンド目。
相手は待ち気味に立ち回り、落ち着いた対応でエイジの攻撃を正確にガード、もしくは潰してきた。僅差でエイジが敗北。
そこから立て続けに4ラウンド目、5ラウンド目とエイジが連敗し、逆転ストレート負けとなってしまった。エイジは唖然とするほかなかった。
「うぅっわあ」
いつの間にか対戦相手側の筐体を見に行っていたらしい少女が、向こう側で声を挙げた。
「大人気ない! ムキになっちゃってー!」
どうやら対戦相手は少女の知り合いらしい。
席を立ったエイジは、密かに対戦相手の背後に回り、その腕前を確かめようとした。
クリスマスに自分に屈辱的な敗北を喫させた相手が、これまた切れ長の目が特徴的な端正な少年だったのが腹立たしかった。
が、少年は、エイジとの対戦後に始まったアーケードモードで、CPUに無残に敗北していた。
「チッ」とひとつ舌打ちをした少年は、「カイリ、出るぞ」と少女に声をかけ、ゲーセンを後にした。
白金の少女の名はカイリというらしい。
美しい名前だったが、二度と会うこともないだろうと、即座に忘れた。

エイジもまた春に彼らと再会し、自分負かせた少年に好き放題振り回されることなど想像もしていなかった。







カイリの納得する誕生日プレゼントを見つける頃には、辺りは暗くなっていた。
困ったことにカイリは当人の趣味嗜好など全く知っておらず、「誕生日にプレゼントを貰ったからお返ししなきゃ」という天使か何かかと言いたくなるような理由だけでアキを連れまわしていた。
事前にリサーチしておけよと呆れたアキだったが、ふと自分の手元を見てプレゼント候補を思いついた。
マフラーだ。
だが、カイリの編み物の腕は相当なもの(悪い意味で)であるため、市販品を渡して波動かと提案してみた。当然カイリは「ならわたしが編むよ!」と抗議したが、アキに論破され、市販品に路線変更するほかなかった。
相手はどうせカイリにぞっこんなのだろう。市販品でも泣くほど喜ぶだろうとアキは判断した。……最悪、ボコボコよれよれのお手製のものでも喜んだことだろうが、それでは誕生日プレゼントとしては少々残念だろうと思い、考えないことにした。
黒とグレーの市松柄のマフラーをプレゼント用に包装してもらい、店を出たる頃には時計は18時を回っていた。

「すっかり暗くなったな」
「そうだね」
アキの声にカイリが頷き、見上げた空に。



ナツキが伊達メガネを手に一度家に戻り、家族と外で夕食を済ませ、見上げた空に。



法令により18時以降16歳以下の入店が禁止されているゲームセンターの外。
追い出されたエイジが溜め息とともに見上げた空に。



ちらちらと雪が降り始めていた。
温暖なこの地域では、この時期に雪が降ることはほとんどない。
多くの人が空を見上げ、初雪で迎えるホワイトクリスマスを喜んだ。

「雪だ」
「雪だねぇ」
アキとなんら変わらない言葉を繰り返し、カイリは白く染まる息に気をよくしていた。
「あっ」
そして、ふと思い出したように声を挙げた。
「ん?」
「すっかり言い忘れてた。メリークリスマス、アキ」
「……あぁ。そうだな」
言いながら、さすがに寒くなってきたのか、アキはいびつな赤いマフラーを首に巻いた。
「メリークリスマス。……さっさと帰るぞ。寒い」
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