こないだクリスマスSSを書いたばかりですが、今度はお正月SSですよ。
ちょっと長くなりそうなのと、まだ先を書けていないので、今回は分けますね。
お正月SS「暁(1)」
日が上って間もない寒空の下。
完全防寒装備の彼女は、ミトンに包まれた指でインターホンを鳴らした。
仄赤い鼻先をこすりながら立ち尽くしていると、ほどなくしてドアから一人の女性が顔を出した。
切れ長の目に、シャープに整った細面。癖っ気のない黒髪に、長身に似合いの長い手足。彼女はクラスの女子の中でも背の高い方だが、出てきた女性はそれ以上だ。
いつ見ても幼なじみにそっくりだ。本人たちに言うと怒られること請け合いなので口には出さないが。
「ミサキさん、あけましておめでとうございます」
彼女ははつらつと新年の挨拶を述べ、ぺこりとおじぎをした。
「あけましておめでとう、カイリちゃん」
ミサキと呼ばれた女性は、怜悧な美貌に微笑みを浮かべた。
高城ミサキ。彼女――冬峰カイリの幼なじみ、高城アキの姉だ。
高城家と冬峰家はいわゆる「お隣さん」的な関係にある。昔から家族ぐるみの付き合いのため、年は少し離れているが、互いによく知った仲だ。
この美貌の姉は普段は愛想や面倒見がよく、いかにも大人の女性といった感じの落ち着いた雰囲気が魅力……なのだが、アキに対してのみ人使いが荒いなどという生やさしいレベルではなく、もはや苛烈とも言える性格へと豹変する。
アキやカイリの同級生である時雨ナツキのパワーアップ版とも言える、アキの唯一の天敵だ。
「ごめんねカイリちゃん。アキならさっき、友達に呼ばれてどこかに行っちゃったわ。初詣、かな、たぶん」
ミサキは先ほどまでの微笑みをどこかにしまい込み、申し訳なさそうな顔をした。
「えっ、ホントですか! 一足遅かったかぁ……」
そう言ってカイリは一瞬うなだれ、すぐに持ち直した。
「わかりました! ありがとうございます!」
再びぺこりと頭を下げた後、「今年もよろしくお願いします!」と敬礼した。
「はい、よろしく」
ミサキも小さく敬礼し、「じゃあね」と再び微笑み、ドアの向こうに去って行った。
カイリはドアの前に立ったまま、思案した。
「先を越されちゃった。けど、アキを誘うような友達って……? ナッちゃん……じゃないしなぁ」
カイリは、対アキ決戦兵器2号機とでも言うべき親友の顔を思い浮かべ、即座にその考えを却下した。
「エイジくんも……わざわざアキを誘って行くより一人の方が気が楽そうだし、他にも一緒に行ける友達はいるしなぁ」
分け隔てのないフレンドリーさにおいてはカイリに勝るとも劣らない彼は、友達にとても恵まれている。
アキとも悪い仲ではないが、わざわざ元旦に家まで出向いて初詣、という仲でもないだろう。
ということは……、
「わかんない」
答えの出ない問答に深く入り込むのをやめ、彼女はドアを背にした。
足元を見て一刹那思考を巡らせ、
仕方ない、一人で初詣に行こっか。
と、出した答えに深く頷いて上げた視線の先に、見知った顔があった。
「……か、カイリちゃん?」
クラスメイト、春海エイジの姿がそこにあった。
寒さのせいか少し赤らんだ彼の顔に、少しの驚きと、また少しの喜びの色が見えた気がした。
(2):http://fortysix046.blog.shinobi.jp/Entry/2600/
ちょっと長くなりそうなのと、まだ先を書けていないので、今回は分けますね。
お正月SS「暁(1)」
日が上って間もない寒空の下。
完全防寒装備の彼女は、ミトンに包まれた指でインターホンを鳴らした。
仄赤い鼻先をこすりながら立ち尽くしていると、ほどなくしてドアから一人の女性が顔を出した。
切れ長の目に、シャープに整った細面。癖っ気のない黒髪に、長身に似合いの長い手足。彼女はクラスの女子の中でも背の高い方だが、出てきた女性はそれ以上だ。
いつ見ても幼なじみにそっくりだ。本人たちに言うと怒られること請け合いなので口には出さないが。
「ミサキさん、あけましておめでとうございます」
彼女ははつらつと新年の挨拶を述べ、ぺこりとおじぎをした。
「あけましておめでとう、カイリちゃん」
ミサキと呼ばれた女性は、怜悧な美貌に微笑みを浮かべた。
高城ミサキ。彼女――冬峰カイリの幼なじみ、高城アキの姉だ。
高城家と冬峰家はいわゆる「お隣さん」的な関係にある。昔から家族ぐるみの付き合いのため、年は少し離れているが、互いによく知った仲だ。
この美貌の姉は普段は愛想や面倒見がよく、いかにも大人の女性といった感じの落ち着いた雰囲気が魅力……なのだが、アキに対してのみ人使いが荒いなどという生やさしいレベルではなく、もはや苛烈とも言える性格へと豹変する。
アキやカイリの同級生である時雨ナツキのパワーアップ版とも言える、アキの唯一の天敵だ。
「ごめんねカイリちゃん。アキならさっき、友達に呼ばれてどこかに行っちゃったわ。初詣、かな、たぶん」
ミサキは先ほどまでの微笑みをどこかにしまい込み、申し訳なさそうな顔をした。
「えっ、ホントですか! 一足遅かったかぁ……」
そう言ってカイリは一瞬うなだれ、すぐに持ち直した。
「わかりました! ありがとうございます!」
再びぺこりと頭を下げた後、「今年もよろしくお願いします!」と敬礼した。
「はい、よろしく」
ミサキも小さく敬礼し、「じゃあね」と再び微笑み、ドアの向こうに去って行った。
カイリはドアの前に立ったまま、思案した。
「先を越されちゃった。けど、アキを誘うような友達って……? ナッちゃん……じゃないしなぁ」
カイリは、対アキ決戦兵器2号機とでも言うべき親友の顔を思い浮かべ、即座にその考えを却下した。
「エイジくんも……わざわざアキを誘って行くより一人の方が気が楽そうだし、他にも一緒に行ける友達はいるしなぁ」
分け隔てのないフレンドリーさにおいてはカイリに勝るとも劣らない彼は、友達にとても恵まれている。
アキとも悪い仲ではないが、わざわざ元旦に家まで出向いて初詣、という仲でもないだろう。
ということは……、
「わかんない」
答えの出ない問答に深く入り込むのをやめ、彼女はドアを背にした。
足元を見て一刹那思考を巡らせ、
仕方ない、一人で初詣に行こっか。
と、出した答えに深く頷いて上げた視線の先に、見知った顔があった。
「……か、カイリちゃん?」
クラスメイト、春海エイジの姿がそこにあった。
寒さのせいか少し赤らんだ彼の顔に、少しの驚きと、また少しの喜びの色が見えた気がした。
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苦手なもの:においが強いもの
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